労働トラブルを防ぐポイント④ ~損害額予定の禁止と労働者の過失割合~


【説明】

 

損害賠償の予定額を定めることは、法律で禁止されています。また、使用者には、事業リスクがあります。

 


【ここがポイント!】


労働者が、会社の設備や什器を破損した場合を想定して、その損害分を支払う旨の覚書や念書等を労働者に提出させる場合があります。


覚書や念書等を提出させる行為自体は、法律上問題無いのですが、注意しなければならないのはその内容です。

 

 

労働基準法では、賠償金や違約金の額を予め決めること禁止しています。


ですから、覚書や念書等で予め賠償額が決まっている内容のものを提出させることは法律違反となります。


従って、運送業などでよくあるのですが、「事故をした場合には、保険の免責額分を負担すること」といった内容の覚書や念書等を提出させることは、法律違反となります。


ただし、この規定は、あくまで賠償額や違約金の額を予定すること禁止しているだけですので、実損損害額に応じた額を労働者に請求することは、問題ありません。


ですから、覚書や念書等を提出させる場合には、「過失に応じた額を支払うこと」といった内容にするべきとなります。

 

 

ところで、ここでもう1つ注意すべき点が、「労働者の過失」に対する考え方です。

 

労働者が、会社の設備や什器、車両等を破損した場合に、実損損害額に応じた額を労働者に請求することは、法律上問題ありません。


しかし、ここで注意しなければならないのが、「労働者の過失割合」の考え方です。

 

 

会社の設備や什器、車両等を破損する多くの場合が、労働者の不注意が原因と言えます。


労働者の不注意が原因なのだから、損害額を全額請求しても問題無い、と思われるかもしれません。


しかし、使用者には、事業を行う上において、労働者が、ミスを犯すかもしれないというリスクを負っていると考えられています。

 

 

つまり、単なる不注意であれば、損害額全額を労働者に請求することはできず、使用者も一定の責任を負う必要があるのです。


飲酒運転で事故を起こした場合など、単なる不注意でなく労働者に重大な過失があった場合であれば損害額を全額請求できる場合もありますが、そのようなケースは稀で、多くの場合には、使用者に一定の責任が生じますので、労働者に賠償請求する場合には、その点をご注意下さい。

 

 

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